引き際の美学

2017年07月08日

引き際の美学

『引退』
[名](スル)役職や地位から身を退くこと。スポーツなどで現役から退くこと。(デジタル大辞泉より)

言葉にすればたったこれだけのこと。
プロスポーツ選手ならば、いつかは通る道。

しかし、そのほとんどは、自らの意思とは裏腹に現役生活の終止符がうたれる。

プロの世界はそんなところだ。

 

ほんの一握りの才能あふれる人間がプロスポーツ界の門を叩き、

さらにそのほんの一握りの選手が自らの意思で引退を決めることができる。
ほとんどのプロ選手が、引退に光を浴びることはない。
いつの間にか、ひっそりとその現役生活を終える。

『引退』
引き際を自ら決めることが出来るのは、選手としてはある意味、栄誉なことだとも思う。

その反面、観ているこちら側は、一抹の寂しさがある。

先日、将棋の世界で、14歳の藤井総太騎士が29連勝という快挙を成し遂げた。
くしくもその裏では、現役最年長77歳の加藤一二三騎士が現役引退を発表した。
また、先日連勝がストップした藤井四段に対して加藤九段はSNS上でこうエールを送る
『人生も、将棋も、勝負はつねに負けた地点からはじまる。』
最後の対局で負けた時点で引退を決めていた加藤九段。
きっとこの言葉は自らに当てたものでもあったのではないだろうか。。。

この光景には、物言えぬ寂しさを覚えた。。

 

美学とは

なぜ今この話題なのか。

この夏、一人のスーパースターがピッチを去る。
8月のロンドンで開かれる世界陸上でジャマイカのウサイン・ボルト選手が引退を決意した。

30歳という年齢。
まだまだ世界のトップに君臨し、8月の世界陸上でも世界新記録さえ、期待される。
世界新記録を出して、引退。
なんて出来すぎたストーリーが脳裏をよぎる。

スポーツ界全体をみても、ボルト選手は超一流選手だと思う。
かつて、陸上界のスーパースター、マイケル・ジョンソン選手(アメリカ)もトップの地位にいる時に引退を決めた。
「なぜ今引退なのか?」
皆が憧れ、必死に努力し、そこを目指し、それでもほとんどの一流のプロ選手も届かない場所にいるのに自ら引退するのか。

くしくも、二人のスーパースターは同じコメントを残している。
『陸上で欲しいと思っていたものはすべて手にした』

日本のスポーツ界では、
浅田真央選手が結果が出ず、苦しみながら引退を決意し、
女子バレーボール界を長きに渡って牽引してきた木村沙織選手も最後まで第一線で活躍したのちに引退を決めた。
先日、宮里藍選手も今季限りでの引退を発表した。
かつての冴え渡るパットが鳴りを潜め、「モチベーションを維持することが難しくなった」とその理由を語った。

少なからず、彼女らは最後まで自分の活躍できる場所に戻る(居る)ために、努力を続けた。
それは自ずと『まだまだ、引退はまだ早い』と自問自答していたのではないだろうか。

しかし、陸上界で欲しいものは全て手にしたと語ったボルト選手はいわゆる、
「まだまだ第一線で戦える力を残したまま引退する選手」である。

ボロボロになるまで戦い尽くして、最後の最後までしがみついて、何もかもを出し切り、完全燃焼の末に引退するのか。

まだまだ活躍出来る中で、惜しまれつつ、その最後を決意するのか。

それぞれの美学がそこにはあると思う。
歩んできた道が劇的なほど、『引退』には美学がある。

必死に戦い抜いた末の、ある意味選手たちにとっての一つのゴール。

この夏、果たしてボルト選手は、我々にどんな美学を魅せてくれるのか。

この目に焼き付けておきたい。

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