敗者のち王者

2018年01月09日

敗者のち王者

皆様、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

新年早々の天皇杯決勝戦(写真は決勝戦観戦中)、ニューイヤー駅伝、箱根駅伝、大学ラグビー、高校サッカー(男女)に高校ラグビー、春高バレー、、、。
とスポーツ界は話題が尽きない。
私同様にスポーツファンの方にとっては、この上ない正月となったこでしょう。
特に2018年はスポーツのビックイベントが二つも待っている。
2月に開幕する冬季五輪。平昌で開催される4年に一度のスポーツの祭典だが、何と言っても今回は日本選手の金メダル獲得が大いに期待される。
スキージャンプ女子の高梨沙羅選手は前回大会の雪辱を晴らすことが出来るか。
また、昨年から高梨選手を脅かす存在となった伊藤有希選手にも注目したい。願わくば、表彰台の1,2位を独占してもらいたい。
注目は、スピードスケート女子の小平奈緒選手だ。
現在、国内外に敵なしの24連勝中、、、。
過去2度のオリンピックでは、力を発揮出来ず、悔しい思いをしてきた。
金メダルに最も近い選手として、マスコミに多く取り上げられ、それが変なプレッシャーにならないか。
だけが心配である、、、。
絶対女王に君臨する日は、もうすぐそこまできている。

もう一つのビックイベントと言えば、サッカーワールドカップロシア大会だろう。
とにかく、ベスト16の壁を破り、世界を驚かせてほしい。

BEST GAME

とにかく年末年始にかけて様々なスポーツを観てきた。
どの競技も素晴らしいパフォーマンスをみせてもらった。
箱根駅伝は、毎年ながらにいくつものドラマがあり、感動した。
大学ラグビーの決勝戦は、帝京大学の9連覇は揺るがないものと思っていたが、終盤まで明治大学がリードする展開で勝負の行方は最後の最後までわからなかった。
結果的に1点差で帝京大学が9連覇を果たしたわけだが、手に汗握る攻防戦は実に見ごたえがあった。
高校ラグビーでも、決勝戦は大阪勢のライバル校同士の熱い戦いに心打たれた。
高校サッカー女子では、静岡の藤枝順心高校が圧倒的な強さで無失点優勝を成し遂げた。

そのどれもが、素晴らしいゲームばかりだった。

しかし、成人の日に行われた全国高校サッカー選手権決勝
流通経済大学柏(千葉県)対前橋育英高校(群馬県)
このゲームに勝るものはないだろう、、、。

ここ数年みてきた高校サッカーの中では間違いなくNo.1のゲームだろう。
92回大会でみた富山第一(富山県)対星陵(石川県)の決勝戦が、これまでは自分の中でbest game(試合は延長の末、3-2で富山第一が逆転勝利をおさめている)だったが、それを更新したのが今回の決勝戦だ。

記憶に新しい前回95回大会での決勝戦。
5-0と決勝戦でも圧倒的な力で初優勝を果たした青森山田(青森県)。皮肉にもその相手が前橋育英だった。
当時、前橋育英はスタメンに多くの2年生を揃えていたこともあり、目の前で見た屈辱的な光景(青森山田の優勝)を1年間、否が応でも忘れることはできなかったに違いない。
そんな雪辱を胸に誓う前橋育英に対し、夏のインター杯を制した流経大柏は夏冬二冠を目指した。

楽しみなカードであることは間違いなかったが、正直ここまで素晴らしい内容の試合になるとは予想していなかった。
両チームに謝罪したい。

結果としては、後半ロスタイムに前橋育英が決勝ゴールを決め、悲願の初優勝を決めたわけだが、後半35分を過ぎたころからだろうか、、、。
なんとも自分勝手だが、【このまま延長戦にならないかな】と心のどこかで願う自分がいた。
それはただ単純にこの好ゲームをもっとみていたかったからだ。

無失点は目標ではない

 【全5試合で11】
優勝した前橋育英が残したこの数字が何を意味するものかご存知だろうか。

ディフェンスラインの4人、3年生は屈辱の青森山田戦と同じメンバー。
悔しさの先にたどり着いたのは、【失点をしない守備ではない】【シュートすらも打たせない守備】だった。
この発想は、なかなか凄い、、、。
ただ、これを本気で実行出来るのは、本当に目の前で悔しい思いをした人間だけだろう。

その結果が、全5試合で打たれたシュート数は11本。
この数字は、驚異的。
失点こそ、準決勝で上田西(長野県)に1失点したものの、群馬県予選も無失点で勝ちあがり、まさに一瞬のスキも見せなかった圧巻の戦いぶりであった。

【失敗(悔しい思い)は人間を強く(成長)させる】ということを改めて感じさせられた。

1つ敗戦はここまで人を強くするものなのかと感じずにはいられなかった。
その敗戦から生まれた、新チーム立ち上げ時に掲げた"5つの原則"も聞いて納得出来た。
選手たちのサッカーノートから生まれた
1.攻守の切り替え
2.球際で負けない
3.ハードワークを怠らない
4.声
5.競り合い・拾い合い(ファーストボールを競り合い、セカンドボールを拾うこと)
この5原則を1年間、選手が持ち続けて戦ったという。

敗者が魅せた、真の王者の戦い

この一戦、贔屓目にみてもかなりレベルの高い試合だったといえるだろう。
たぶん、どのサッカー解説者に聞いても高校生のレベルの試合ではない、もっと高いレベルの試合だったと言うに違いない。
なぜならこの試合、両チーム共にとにかく、ミスが少なかった。
出ている全選手の集中力は本当に物凄いものだったと思う。
もう一つがこれだけレベルの高い試合を繰り広げながら、ペースダウンすることがほとんどなかった。
ハイプレスが特徴の流経大柏に対し、細かいパスワークで攻撃のリズムを作ろうとする前橋育英の構図は終始変わらず、お互いの特徴が最大限に出た試合だったことも要因の一つに上げられるだろう。
それとなんといっても【無駄なファールがほとんどない】のがこの好ゲームを成立させた最大の要因ではないだろうか。

前回大会で魅せた青森山田との決勝戦と打って変わって、躍動感溢れる動きを見せた前橋育英の選手たちからはあの1年前の敗北を忘れているものは一人もいなかったように見えた。
本当にそれは1プレー1プレーに反映され、一切の手を抜かない(気を抜かない)魂のプレーとはまさにここにあると感じることが出来た。
それを感じることが出来たのは間違いなく、流経大柏が素晴らしいプレーを魅せてくれたからに他ならない。

大会初失点が、優勝を決める決勝ゴールになるとはなんとも皮肉なものだ。
次は流経大柏のリベンジの番となる。
きっと千葉県の厳しい予選を勝ち抜き、またこの舞台に戻ってきてくれるのであろう。期待して待っていたい。

最後は【気持ち】だ。
と偉大な選手たちも口を揃えて言ってきた。
確かに強い気持ちは、勝敗を左右することはある。

しかし、前橋育英を見ていたら【強い気持ち】の上に【確固たる技術】。
これを備えることこそが真の王者の証なのだ。

と教えられてるような気がした。

とにかく、両チームに大きな拍手と最大限の賞賛を送りたい。

いかがでしたか、中村昌哉コラボコラム?中村昌哉コラムについてはこちらから


新着フットサルウェア